「性別適合手術は保険が適用されるの?」
「性別適合手術後って戸籍の変更は可能なの?」
性同一性障害に悩む人のための手術である性別適合手術ですが、日本では2018年に医療保険が適用されるようになりました。
申請すれば戸籍の変更も可能であり、肉体・戸籍ともに自分の望む性別になることが可能です。
しかし、保険が適用されるには複数の条件があり、2024年現在、その条件は非常に厳しいものとなっています。
もし、現在性同一性障害の治療を行っている場合、治療内容によっては保険適用外になってしまう可能性もあります。
ここでは性別適合手術における保険適用の条件や費用、戸籍の変更の申請方法など、性転換に関する方法や現場をご説明します。
- 性別適合手術の基礎知識
- 性別適合手術で保険が適用されるための条件
- 保険が適用されない場合の手術費対策
性別適合手術とは?手術内容や保険が適用される・されない手術について紹介
性別適合手術とは、身体の性別と精神の性別を合わせるための手術で、性転換手術ともいわれています。
性同一性障害やMtFやFtMで悩んでいる人のための手術であり、保険が適用されるものとされないものの違いは、以下のとおりです。
- 保険が適用されるもの:乳房切除、精巣摘出などの性同一性障害の治療に該当するもの
- 保険が適用されないもの:顔の整形、脱毛・豊胸といった美容面に該当するもの
ここでは、そんな性別適合手術の内容や保険適用の条件といった、基礎的なことをご説明します。
性別適合手術の内容や全額負担した場合の費用について
性別適合手術は、主に乳房や尿道、陰部といった性別特有の特徴となる部位及び臓器を摘出、あるいは代替物の移植等が当てはまります。
当院で行っている手術を例に、具体的な手術名と内容・費用についてご紹介します。
手術名 | 内容 | 費用 |
---|---|---|
睾丸摘出手術 | 睾丸を摘出し、男性ホルモンの分泌の低下を行なう手術 性同一性障害の診断書が必要 | ¥330,000 |
睾丸摘出+陰嚢切除 | 睾丸摘出後の見た目の改善目的で陰嚢も切除する手術 | ¥495,000 |
上の表でも記載しているとおり、性別適合手術は一部位につき手術費が数十万円単位で発生します。
他の部位の手術も行った場合、百万円単位の金額が発生するケースが多いです。
そのため、費用に関しては事前に十分な情報収集が必要です。
より詳しい施術内容は下のリンクで行っておりますので、お悩みの際はぜひご相談ください。
性別適合手術後で性別の変更は可能?申請についての紹介
性同一性障害の治療において性別適合手術をした場合、条件を満たせば戸籍上の性別も変更が可能です。
この場合、届け出は役場ではなく家庭裁判所に届け出を出すことになります。
戸籍上の性別を変更する場合、以下の条件に該当すれば、変更可能です
- 二人以上の医師により,性同一性障害であることが診断されていること
- 18歳以上であること
- 現に婚姻をしていないこと
- 現に未成年の子がいないこと
- 他の性別の性器の部分に近似する外観を備えていること
引用元:性別の取扱いの変更 | 裁判所
※ 令和5年までは「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」という条項も条件に含まれていましたが、現在では無効となっています。
これに加え、申立書や戸籍謄本、収入印紙代800円分などを用意し、自分の住まいの管轄にある裁判所に申請をしましょう。
申立書類を始め、申請に必要な書類についての詳細は裁判所のホームページから確認できます。
保険の適用について
性別適合手術は日本では2018年に保険が適用されるようになりました。
そのため、医療費の3割程度の価格で性別適合手術を受けることが可能です。
しかし、性別適合手術の保険はまだ歴史が浅く、適用されるには様々な条件があります。
ここでは、性別適合手術の保険が適用されるケースとされないケースについてご説明いたします。
性別適合手術で保険が適用されるものとされないものの違い
性別適合手術で保険が適用されるものとされないものを分けると、以下の通りになります。
- 乳房切除手術
- 尿道形成手術
- 陰茎形成手術
- 陰茎・精巣摘出手術
- 会陰形成手術
- 造膣術
- 子宮摘出手術
など
- 脱毛
- 豊胸
- 整形手術
- ホルモン注射
上述したように、性別適合手術で保険が適用されるケースというのは、性別特有の特徴となる部位及び臓器を摘出、あるいは代替物の移植等といった手術です。
豊胸手術や脱毛、顔の美容整形、ホルモン注射等は保険の適用外となり、自費診療となります。
性別適合手術における保険適用の条件
性別適合手術における保険適用の条件は、手術内容だけではありません。
性別適合手術で保険が適用される条件に、国の認可及びGID学会の認定を受けた病院での手術でなければ保険は適用されません。
GID学会の認定を受けたクリニックは、2024年10月現在、以下になります。
これらの病院は国の認可及びGID学会の認定を受けているため、保険が適用されます。
手術費に関しては病院ごとに異なるので、クリニックに確認しましょう。
自費診療としての費用として、一部手術費用の相場を紹介します。
乳房切除手術:70万円
子宮摘出手術:80万円
陰茎形成手術:200万円
膣形成手術:150万円
保険適用の場合、これら手術費用が3割負担になります。
例えば、乳房切除なら70万円の3割なので、21万円で手術が可能です。
保険適用の注意点!ホルモン治療を受けている場合保険は適用されない
上述したように、性別適合手術は特定の病院で保険が適用されますが、実際に保険が適用されるケースは限られています。
その理由として挙げられるのがホルモン注射による治療です。
保険が適用される手術を行なう際、自費診療にあたる治療を行っている場合、保険が適用されません。
これはいわゆる「混合診療」といい、混合診療の場合、保険が適用されるものも一括して自費診療とみなされます。
混合診療がすべて自費診療となる理由について、厚生労働省は以下の理由で禁止をしています。
- 安全性が確認されていない医療も保険扱いとなることで、有効性や安全性が確立されていない治療の助長につながる
- 保険外の負担も行なうことになるので、患者の負担が不当に増加する可能性がある
現在ホルモン治療は自費診療に含まれた治療であるため、性別適合手術を行う前にホルモン治療を行っている場合、混合診療扱いとなり、保険が適用されません。
現状、性別適合手術で保険を適用したいのであれば、ホルモン治療前に行える乳房切除手術などを事前に行うことになります。
性別適合手術で保険が適用されない場合の対処法
性別適合手術を行う場合、最寄りに保険が適用される病院がない、あるいは前述したとおり混合診療になってしまうというのでしたら、保険が適用されません。
その場合、診療費が高く付くので、生活面に強い負担がかかってしまいます。
その場合、対策としては以下の2つが挙げられます。
- 医療用ローンを利用する
- 確定申告で医療費控除の申請を行う
ここでは、保険が適用されない場合の医療費対策についてご紹介します。
ローンを利用して金銭面の負担を分散する
医療費ローンを活用することで、金銭の負担を分散できます。
従来の銀行や金融機関でのローンも活用できますが、医療費ローンは低金利で活用可能です。
しかし、審査があるので必ず融資を受けられるわけではありません。
医療ローンを利用する場合、大きく分けると銀行系医療ローンと、信販系医療ローンのどちらから選ぶことになります。
金融機関によって若干の違いがありますが、銀行系医療ローンと信販系医療ローンの大まかな違いは以下の通りになります。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
銀行系医療ローン | 金利が低い | 審査が厳しく日数がかかる |
信販系医療ローン | 審査が通りやすく短期間 | 銀行系医療ローンより金利が高い |
銀行系医療ローンは信用情報や収入など審査が厳しいため、通らない場合は信販系医療ローンを利用しましょう。
また、ローンを利用する場合は、事前に返済計画をしっかりと立てることが大切です。
確定申告で医療費控除の申請を行う
確定申告を行なうことで、医療費の控除ができます。
医療費控除は、年間の医療費が一定額を超えた場合に受けられる税控除制度です。
性別適合手術の費用が高額である場合、医療費控除を利用することで税負担を減らすことができます。
確定申告の際に必要な領収書を保管し、控除を活用することで、費用の一部が還元される可能性があります。
年間の医療費が100,000円を超える場合、確定申告で医療費の控除が受けられます。
医療費控除の金額は、次の式で計算した金額です。
近年では確定申告はインターネット上でも行える他、手続きのマニュアルも充実しているため確定申告はやりやすくなっています。
多少手間を感じるかもしれませんが、大幅な節約につながるかもしれませんので、忘れずに行ないましょう
まとめ
この記事では性別適合手術の基礎知識や、保険が適用される条件について紹介しました。
性別適合手術の保険制度はまだ始まったばかりであり、適用される条件がまだ完全に整っていないというのが現状です。
適用される病院の少なさやFtMやMtFに必須に近いホルモン治療をした場合保険が適用されないなど、保険が適用されるためのハードルは高いです。
しかし、将来的には緩和される可能性は十分にありますし、現在でも医療ローンや医療費控除など、月々の負担を減らせる方法は見つかりやすいです。
しかし、性別適合手術はお金もですが時間がかかる手術であり、手術中に決心が鈍るかもしれません。
本当に初めていいのか、始めるべきなのか、医師と相談し、メリット・デメリットを見極めてから行ないましょう。
\まずはお気軽にご相談ください/